歴史・時事

なぜ日本はハンコ文化から脱却できないのか?脱ハンコ化は可能か?

 突然ですが、あなたはこのような経験はありませんか?

・ハンコを忘れてわざわざ買いに行った

・実印、認印、銀行印、シャチハタの違いがよく分からない

・なぜサインがダメでハンコが必要かが分からない

 私も日本のハンコ文化に疑問を呈しているうちの1人で、上記のような経験があります。先日アルバイトの退職届を提出しに行ったのですがそこでハンコが必要だと言われ、ハンコを持ち合わせていなかった私は当然のように「サインでいいですよね?」と聞きましたが答えはNO。後日郵送して送る羽目になりました。

 実はハンコ文化は世界から見ても異端であると言わざるを得ません。ハンコをここまで日常的に使用している国は日本だけです。10年ほど前までは中国や台湾、韓国にも印鑑登録制度はありましたが、今でも続いているのは日本だけです。台湾でも日常生活においてハンコを使うことはありますがほとんどの場合サインで済ませます。ここまでハンコにすがりついているのは世界を見渡しても日本だけなのです。ではなぜ日本ではこんなにハンコが重要視されているのでしょうか。

ハンコの種類

 まずはハンコの種類について簡単に紹介します。

・実印… 住民登録をしている市区町村の役所に印鑑登録の申請をして受理されたハンコのこと

・認印… 印鑑登録をしていないハンコのこと

・銀行印… 金融機関等で口座を開設する際などに使用するハンコのこと

・シャチハタ… シャチハタとは印鑑を販売している会社の名前。大量生産が可能で防犯上の観点から認印以外では使えない

 実印を作るためには本人確認が必要なため、実印=本人確認が十分であるとみなされます。

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ハンコの歴史

 ハンコの起源はメソポタミア文明まで遡ると言われています。紀元前3500年前頃、シュメール人が世界最古の文字を生み出し、同時にハンコも生み出していたそうです。

 その後海を越えて中国、日本へと伝わってきました。日本最古のハンコは西暦57年の金印(漢委奴国王印)とされています。この時代から紙に捺印する文化があったそうです。

King of Na gold seal.jpg
漢委奴国王印 wikipediaより

 奈良時代、平安時代、戦国時代、江戸時代と長くに渡って偽造防止のためにハンコが押されるようになっていましたが、一般的に普及し始めたのは明治時代に入ってからです。

 明治時代にはハンコを普及させたいハンコ派の銀行&大蔵省と、サインで済ませたいサイン派の司法省との間に大論争が沸き起こりました。

司法省

ハンコを使用することで偽印や盗印が多発しているため、サインで済ませることが望ましい。しかしサインだと字を書けない人もいるため当面はサインとハンコを併用したい。

銀行&大蔵省

サイン+ハンコは面倒臭いし書類がかさばるため効率が悪い。ハンコだけで十分だ。

 この論争の結果、銀行と大蔵省が主張するハンコの使用が望ましい、すなわち契約書にはハンコが押してあれば良いという法案が1900年に施行され、この頃から日本では契約書にはハンコを押すという慣習が広まりました。この決定には当時は紙を使っていたこと識字率の低さも考慮されていました。

 当時の状況を考えると、この決定は妥当だったと考えられます。しかし、現在では世界トップクラスの識字率を誇る日本において、自分の名前が書けないからハンコを使うべきだ。という考え方は道理にかなっていないですね。

 契約書を書くときにハンコがないと契約が成立しないという法律があるから?と思われた方もいるかもしれませんが、実は一般的にハンコの使用を義務付ける法律はありません。すなわち、サインであろうがハンコであろうが何ら変わりないということです。問題なのはハンコの有無ではなく当事者間で合意に至ったかという点だからです。

 ただし、押印された文書がされていない文書に比べて信用性が高いのは事実です。書類の信用性を高めるために主に慣習に基づいてハンコは使用されているという理解で良いと思います。しかし現在のコロナ禍においてそのハンコの必要性が疑問視されています。書類の信用性は別にサインでも同じですよね?という疑問です。

 ではなぜ日本では脱ハンコ化が進まずにハンコを使うことに固執し続けてきたのでしょうか?

ハンコ文化を肯定する意見

 ハンコを使い続けることに賛成する人たちの意見は主に2つ考えられます。1つ目はハンコ業界を守ることです。ハンコ市場は1700億円規模もあり、世間の慣習としてハンコを使わないようになればハンコを作っている工場や会社は間違いなく経営が悪化、さらには倒産してしまう恐れもあります。

 2つ目は日本の伝統を守りたいという意見です。やはり家の購入、車の購入などで今まで当たり前にハンコが必要とされてきた中でハンコを押す緊張感、そこに責任が生まれるという考えが根付いているのではないでしょうか。

 他にも契約する際にハンコを押してあった方が何かトラブルが発生したときに有利だから、という理由も考えられますが、これらのハンコ文化に賛成する人たちが政治団体を含めてこれまで脱ハンコを阻止してきました。例えば、2018年に設立された自民党の「日本の印章制度・文化を守る議員連盟」通称日本はんこ議連などです。

 ただし、脱ハンコに賛成する人は85%以上で、ハンコを使い続けることに賛成することはマイノリティであることは紛れも無い事実です。

これからハンコはどうなる

 コロナの影響でハンコ文化の弊害が露呈してしまいました。テレワークを推奨したいのに契約書にはハンコを押さないといけないから出勤しないといけない…

 そこで多くの会社は契約書をデジタル化する、電子署名を可能にするなどの柔軟な対応をとってきました。これからは電子契約のサービスへの需要が高まってくることは想像に難くないでしょう。

 しかし、いきなり契約書をデジタル化したとしても、それに必要な本人確認が手間であったり、法の整備が追いついていないために企業としてもコロナの社会情勢に合わせて脱ハンコを推し進めたいのになかなか進められない。というのが現状です。

 菅新総理はデジタル庁を新設し、デジタル化を急速に進める動きを見せています。日本はまだそんな古臭いやり方でやってんの?と他国から揶揄されないように時代の流れに柔軟に対応することが必要だと考えます。

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 しかし、デジタル庁を新設しデジタル化を進めるという動きは大賛成なのですが果たしてこれが本当に達成できるのか、ということが懸念です。脱ハンコ以外にもキャッシュレスやマイナンバーカードの普及など課題は山積みです。古臭い慣例にとらわれる傾向にある日本がこれからどのように変化していくのかに世界からの注目が集まります。私も脱ハンコ化に非常に期待しています。

 最後まで読んでくださってありがとうございました!!

ABOUT ME
げんぼー
大阪出身の20歳大学生です。大学から中国語の勉強を始め、1年生の夏休みに中国の蘇州へ短期留学をして、台湾の大学へ1年間交換留学をしました。 旅をすることが好きで、台湾本島一周や中国大陸横断ひとり旅なども経験しました。このブログでは、台湾の情報について主に紹介していこうと思います!少しでも読者さまにとって有益な記事を書けるように努めたいと思います!趣味はプロ野球観戦と写真撮影です! インスタグラムでは中国語話者向けに日本語を、日本人向けに中国語を教えるアカウントを始めました!よければそちらもご覧ください! @genbo_japanese HSK6級/TOEIC850点/英検準一級