ODAという言葉を聞いたことはありますか?ODAとは政府開発援助のことで、政府や政府関係機関が発展途上国に資金や技術を提供することを意味します。政府がこのような資金や技術提供をする目的は、発展途上国の開発が目的で、平和構築、基本的人権の推進、人道支援などを含んでいます。
本記事ではODAが具体的にどのようなことをしているのかについてと、そこで出てくる円借款などの具体的な用語を解説したいと思います。
ODAについて
ODAを推進しているのは日本だけではなく、先進国の多くが発展途上国を支援しています。実は昔は日本もODAの恩恵を受けている側でした。日本は戦後、非常に貧しい状態が続きました。その復興を助けたのがODAでした。その援助の1つに「ガリオア資金」というものがあり、1946年から6年間、日本が受けたこのガリオア資金の総額は18億ドルにも及びました。また、1953年からは世界銀行から8億6,000万ドルものお金を借りて、東海道新幹線や名神高速道路、黒部ダムなど現在の日本のインフラの中心を担う重要な基盤となっている施設を建設しました。
この世界からの援助がなければ日本の戦後の復興はなかったかもしれません。そのため、先進国が発展途上国を支援することは非常に重要なことだと言えます。
現在日本はODAを支援する側に立っています。
ODA実績
以下のグラフは主要国のODA実績を表したグラフです。(単位:100万ドル)
2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | |
米国 | 31,267 | 33,096 | 30,986 | 34,421 | 34,732 | 34,152 |
ドイツ | 14,228 | 16,566 | 17,940 | 24,736 | 25,005 | 24,977 |
英国 | 17,871 | 19,263 | 18,553 | 18,053 | 18,103 | 19,410 |
日本 | 11,469 | 9,483 | 9,203 | 10,417 | 11,463 | 14,164 |
フランス | 11,339 | 10,620 | 9,039 | 9,622 | 11,331 | 12,136 |
イタリア | 3,430 | 4,009 | 4,003 | 5,087 | 5,858 | 5,190 |
カナダ | 4,947 | 4,240 | 4,277 | 3,930 | 4,305 | 4,660 |
ODAの支援先
以下の図は日本のODAの支援先を地域別で表した図です。日本のODAの支援先はアジアや中東が50%程を占めており、アフリカにも全体の20%の支援を行なっています。

ODAの支援は、日本政府だけが独自に行なっている訳ではなく、外務省、JICA、NGOや民間企業などと連携して推進しています。
具体的には、政府が議論し決定したODAの内容を国や地域ごとに議論するのが外務省で、外務省が考えたプロジェクトを現地で実行するのがJICA、そしてJICAのプロジェクトに参加して途上国を支援するのがNGOや民間企業です。そのため、「ODAの4層構造」とも言われています。
ODAの種類

ODAには二国間援助と多国間援助の2種類に分けられます。
二国間援助は、「贈与」と「政府貸付等(有償資金協力)」に分けることができ、贈与は開発途上国・地域に対して無償で提供される協力のことです。その贈与にも無償資金協力と技術協力の2種類があります。
政府貸付等(有償資金協力)は円借款と海外投融資の2つに分けられます。円借款(えんしゃっかん)とは、経済発展や福祉の向上を促すための資金を円で貸し付ける仕組みです。借款は贈与よりも大規模な支援を行いやすく、道路や鉄道、発電所などのインフラ建設支援に適しています。また、返済義務を課すことで途上国自身にも返済するための主体性と自助努力を促し、日本との中長期的な関係持続に繋がるという外交的な側面もあります。
ODAの具体例
中国
意外かもしれませんが日本は中国に対しても莫大なODA支援を行ってきました。円借款の額を見ると累計で3兆3,000億円にも及びます。しかし中国は2020年現在世界のGDP2位の大国へと台頭しました。日本のODA支援は日中関係の柱としての側面も持ちつつ、中国の経済力発展に大きく寄与した1つの例だと言えるでしょう。2018年の新規案件を最後に中国へのODAは役目を終えて打ち切られました。
フィリピン
フィリピンは世界でも有数のODA受け取り国であり、日本も多額の支援を行ってきました。2017年に安倍総理がフィリピンを訪問した際、5年間で1兆円規模の支援を行う旨を発表しました。
具体的には、インフラ整備や自然災害の多いフィリピンにおいての環境保護への支援、産業人材育成などへの支援です。日本側はフィリピンへのODA支援を通して日本とフィリピンの関係構築するという狙いもあります。
スリランカ
スリランカへの支援は、インフラ整備、農業分野を中心とした産業育成、地雷除去、医療施設強化等の支援などが挙げられます。
スリランカへの円借款は累計で1兆円以上にものぼります。日本にとってスリランカのインフラ整備等を支援することで、日系企業がスリランカへ進出した後の活動環境にも影響してきます。
まとめ
今回はODAの具体的な役割をご紹介しました。冒頭でも紹介しましたが、日本も戦後ODAの支援を受けていた側だったということは非常に驚きだったのではないでしょうか。そしてODAは発展途上国の発展に必要不可欠な支援だということがお分りいただけたでしょうか。
発展途上国の中でも返済能力のない国に対しては無償で資金や技術を提供したり、ある程度の能力がある国に対しては円借款という方法を用いて返済させることで日本との中長期的な関係持続とその国での経済発展が見込まれます。
発展途上国への貢献に興味がある方は是非外務省のホームページやJICAのホームページもご覧になってください。ODAに関してのより具体的な説明がされています。本記事も少しでも多くの方のお役に立てたら幸いです。最後まで読んでくださってありがとうございました!